札幌高等裁判所 昭和26年(う)907号 判決
一、大野高子作成の盗難届(大野高子とあるは小野豊子と同一人と認める)
を掲げている。ところが、原審公判調書中被告人の供述記載によると、被告人は公訴事実を自白しているけれども、大野高子は小野豊子と同一人であることを認むるに足るものはなく、右盗難届の記載によると、その作成名義人である大野高子が判示のような盗難にかかつたことは認められるが、右大野が小野豊子と同一人であることを肯認し得る記載はない。尤も記録中小野豊子の司法警察員に対する第三回供述調書には、同人が大野高子名義で盗難届を出した旨の供述記載があるので、右供述調書の供述記載と綜合すると、右盗難届の作成名義人である大野高子は被害者である小野豊子と同一人であることが認められる、従つて原判決は或は右供述調書の供述記載によつてこれを同一人と認めたものと推測されないではないが、若し然りとすれば、よろしく右供述調書を証拠として挙示すべきであつて、これを掲げないで、単に右大野高子が小野豊子と同一人であることを認め得ない被告人の自白に加うるに、自己が盗難にかかつた旨の大野高子作成名義の盗難届を挙示するだけでは被告人が小野豊子から財物を窃取したという事実を認むる補強証拠としては不十分で、結局完全な証拠の標目の挙示を欠き、判決に理由を附さない違法ありといわざるを得ないので、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。